5.1.26

謹賀新年とゲイル・ヤングさんの音源について



明けましておめでとうございます。昨年もまたあっという間に時間が経ってしまいましたが、
いくつかの新しいプロジェクトを世に出そうと思っています。
そのための具体的な準備を進めています。

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先日作曲家のゲイル・ヤングさんより興味深い音源を送ってもらいました。リアルタイムの即興で、後からオーディオ素材は付け足されていないそうです。

Young and Wheeler - From Grimsby to Milan
https://www.youtube.com/watch?v=rWUBXhppqAA

ゲイルさんはアマランスという楽器を演奏されたそうですが、
木製の一見箏のような見た目をしています。
アマランスはこちら↓

他のサウンドはロバート・ウィーラーさん演奏によるシンセサイザーだそうです。
ちょうど私も現在制作中のアルバムの中でノイズや音高を持たないサウンド、
アンビエンスをどう扱うかというのに試行錯誤している段階なので
大いに参考にさせてもらっています。

ちなみに数年前発表した私のアルバム『later』について、
かつてゲイルさんから文章を寄せていただきました。
よろしければこちらもぜひ。

On the album “later”: echoes of “later”
https://www.ombrophone.net/jp/echoes.html

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Composer Gayle Young sent me fascinating recording. It is real-time improvisation, with no audio material added afterward.

Young and Wheeler - From Grimsby to Milan
https://www.youtube.com/watch?v=rWUBXhppqAA

I heard Gayle played an instrument called the Amaranth,
which looks like a wooden koto at first glance.
Amaranth is below:

The other sounds are synthesizers played by Robert Wheeler.
I'm currently in the process of experimenting with how to handle noise and pitchless sounds—ambience—in the album I'm producing right now,
so I'm finding this extremely helpful.

Incidentally, regarding my album "later" released several years ago,
Gayle once contributed a piece of writing about it.
If you're interested, please check this out too.

On the album “later”: echoes of “later”
https://www.ombrophone.net/jp/echoes.html

9.9.25

相内啓司さんYoutubeチャンネル

 今年の夏もとても暑かったですね。


以前、アニメーション作品『REMれむ-The Waves of Endless Dreams-』で音楽をつけさせていただいた作家・相内啓司さんのYoutubeチャンネルで、多くの作品が一挙公開されました。


相内啓司Youtubeチャンネル

https://www.youtube.com/@%E7%9B%B8%E5%86%85%E5%95%93%E5%8F%B8


先述した『REM』の中村益久さんバージョンや、『Botanical life ボタニカルライフ』、『PASSING -ALL IS NOTHING『度一切空』なども公開されています。

ぜひご覧くださいませ。

17.3.25

坂本光太テューバリサイタル:B→C バッハからコンテンポラリーへ

 明日3月18日(火)、オペラシティリサイタルホールにて、坂本光太さんによるリサイタル「B→C バッハからコンテンポラリーへ」が開催されます。

大変嬉しいことに、その中で坂本さんに過去演奏していただいた拙作の改訂版《あるチューバ/テューバについての物語》(2021/2024)が、坂本さんのテューバと杉山萌嘉さんのピアノによって演奏されることとなりました。

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B→C バッハからコンテンポラリーへ 270 坂本光太(テューバ)
日程|2025年3月18日[火]19:00
会場|東京オペラシティ リサイタルホール
出演|坂本光太(テューバ)
共演|杉山萌嘉(ピアノ)
   長洲仁美(パフォーマンス)
   山﨑燈里(パフォーマンス)
   和田ながら(演出)
   甲田 徹(音響)
曲目|J.S.バッハ:カンタータ第12番《泣き、歎き、憂い、怯え》BWV12から「シンフォニア」
   J.S.バッハ:ソナタ ト短調BWV1030b 
   久保田 翠:あるチューバ/テューバについての物語(2021/24)
   山﨑燈里:黒い帯(2021)
   和田ながら/坂本光太:新作(2025、世界初演)
   カーゲル:アーテム (1970)
   グロボカール:エシャンジュ(1973)

ご予約・詳細
>>https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=16418
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せっかくの機会ですので、この作品の成立過程を書いておきたいと思います。

坂本さんとはパフォーマンスグループ「実験音楽とシアターのためのアンサンブル」で初めてご一緒しました。2017年、出会って早々にヨーロッパツアーに参加しました。その時の演奏動画はいくつか既にYoutubeに上がっています。

    河野聡子 Satoko Kono - Spin Cycle (2017)

    https://www.youtube.com/watch?v=4NAr8SNFqyc

    一柳慧 Toshi Ichiyanagi - Sapporo (1962)

    https://www.youtube.com/watch?v=oSXIXm795Yw

    久保田翠 Midori Kubota - 東京特許許可局 Tokyo Patent Approval Office (2017)

    https://www.youtube.com/watch?v=M07SD8tWYYk

この時点で他のメンバー同士はある程度一緒に演奏した経験があったわけですが、そこに新たにやってきた坂本さんは恐るべき柔軟さと高度な身体技術、ご本人の親しみやすいキャラクターとが相俟ってあっという間にアンサンブルに溶け込んだのでありました。

その後何年か経ち最初にソロ曲のご依頼をいただいた時、作品の「内容」についてはその時点でどうなるかわからなかったにせよ、演奏結果として坂本さんご自身のありようが感じられるような作品を作りたい、と思いました。坂本さんと直接お話になったことのある方には伝わると思うのですが、坂本さんは大変実直で音楽に対し誠実で、かつ声・話し方とか身のこなしに坂本さんらしい、えもいえぬ魅力があるのですよね。そうしたものが(第一目的ではないにしても)どうしようもなく現れてしまうような、坂本さん「が」演奏することに意義のある作品にしたいと考えました。

ちょうど当時作曲していた時期に、話すという行為にも興味があり、濱口竜介監督の作品(『ハッピーアワー』『寝ても覚めても』)や著書『カメラの前で演じること』(左右社、2015年)に関心を抱いていたこと、わたし自身のアルバムにおいて「ドキュメンタリー」について考えていたこと、昔から好きなタランティーノ作品における冗長なおしゃべりを作品に転用したいなと考えたこと、などが絡みあって、最初の作品《あるチューバについての物語》(2021)が完成しました。坂本さんは話しながら演奏をしますが、その言葉はテューバという楽器についての説明であったり、自分自身の過去についてであったり、観客に対する問いかけであったり、坂本さんの行為についての説明であったりします。

その後改訂を重ねるたび、経過した時間を踏まえた記述を加えており、今回は演奏会にメタ的に触れる箇所があります。

リハーサルに先日伺ってびっくりしたのですが、この数年を経て、坂本さんの発話の様子が初演とはかなり変化をしているのですよね。もとより坂本さんご自身の発話の響きを反映させることが作品の目標のひとつでもあるので、そうした変化自体が作品のなかで生き生きと生じるのは願ったり叶ったりなのですが、ある作品を重ねて再演するということの意義を深く感じたのでした。

最後に、上にあげたいくつかのインスピレーション源について少し触れたいと思います。

濱口竜介監督は準備段階におけるセリフの扱い方について有名ですが(『ドライブ・マイ・カー』の中で演技という形でその方法を目にすることができる)、発された言葉の中に何事かが生じてしまう、そのような瞬間を撮影過程において準備する(そして映像にとらえる)というところに魅力があると思います。「実験音楽とシアターの〜」でパフォーマンス作品に取り組んできたときにも、そのような「何かが起こるのに立ち会うこと」ということへの興味がわたしの中に醸成されたわけですが、その興味が、より言葉に注目をした作品へと発展したかなと感じます。

「ドキュメンタリー」についてですが、本作で坂本さんは坂本さん自身について語る場面があるのですけれども、その中には真実もあり、わたしの書いた言葉を通じて多少の誇張やフィクションになっている「であろう」ところもある。そもそもドキュメンタリーというものがフィクションでもあるわけで、語られたことがフィクションとドキュメンタリーの間を彷徨うような、そんな言葉のありようになっているかと思います。そしてそのような曖昧な言葉のありようは、逆説的に聞こえるかもしれませんが、先にも述べた坂本さんの音楽家としての誠実さゆえに実現されているといえましょう。

タランティーノについては初期作品からマシンガントークや登場人物同士のダラダラと続くなんてことはない会話が有名ですが、作品の時間の中にそのような淀む時間、一方向に流れているのではない時間が流れるといいなあと思い、坂本さんに関連のある言葉として入れてあります。

言葉によって設定されたいくつかのコンテクスト、それらのコンテクストにおいてこそ実現しうる楽器の音、

言葉と音との対応、言葉によってこそ示すことのできる内容、しかしながら言葉からはこぼれ落ちてしまう内容、

坂本さん自身の身体に固有の響きやそうではない響き、

フィクションとノンフィクションの狭間で揺れ動くもの。

そうしたもの全てをあるひとつのチューバ/テューバについての、あるいはチューバ/テューバという楽器総体についての物語として、

坂本さんのチャーミングな演奏を通じてお届けできたら幸いです。

8.2.25

「アジア音楽祭2025 in Kawasaki 室内楽コンサートⅢ Strings」終了

「アジア音楽祭2025 in Kawasaki」の演奏会群のひとつ、「室内楽コンサートⅢ Strings」が盛況のうちに一昨日終了いたしました。

松岡麻衣子さん、亀井庸州さん、迫田圭さん、竹本聖子さんという超豪華メンバー弦楽四重奏により、アジア各国の作曲家による5作品が演奏されました。

作曲家は皆異なるバックグラウンドをもち、求める音の響きも異なりますが、素晴らしい演奏者たちによって各曲の良さ・持ち味が遺憾無く発揮され、自分で言うのもなんですが客席の反応もとてもよかったと感じました。

五曲というのは通常の演奏会としては少ない曲数かもしれませんが、一曲一曲の個性が明確に際立って、むしろ今回の演奏会においてはよい構成になったと思いました。

私の作品「秘密のことば」は、楽器を通じて話しながら(実際に話すわけではなく、作曲者の話した音源を記譜した音符を話すように弾く)歌も歌い、という異なるレイヤーを行き来する作品なのですが、なんとも鮮やかな音像にしてくださいました。しちめんどくさいコンセプトの説明に耳を傾け、真摯に取り組んでくださった演奏者の方々に改めて心より感謝申し上げます。

演奏会にいらしてくださった方のブログで、演奏会が取り上げられました。作品についてのコメントがメインのようですが、ぜひご覧ください。
大島資生
https://note.com/modochan/n/nec0dc0aa72aa




29.1.25

JFCアジア音楽祭2025 in Kawasaki

来週2月3日よりミューザ川崎で、JFCの「アジア音楽祭2025 in Kawasaki」が開催されます。アジア各国の作曲家たちの作品を一堂に集めたこの音楽祭、2月5日の弦楽合奏の演奏会の企画を担当しました。

JFC「アジア音楽祭2025 in Kawasaki」 ← クリックすると音楽祭全体のプログラムが見られます。

室内楽コンサート Ⅲ Strings
2025年2月5日(水)19:00開演
ミューザ川崎 市民交流室

ヂャヨン・ベク(韓国): The piece of memory for two violins 
ユーフン・ウン(シンガポール): I Came, I Slept, I Departed
今村 央子 (日本): 此処-池田澄子の俳句による-
久保田 翠 (日本): 秘密のことば
アリス・ダリョーノ(インドネシア): Cekaking Carita

演奏
ヴァイオリン:松岡麻衣子・亀井庸州
ヴィオラ:迫田 圭 チェロ:竹本 聖子
チケット:3,000円(全席自由)
  12月12日一般発売開始 (一社)日本作曲家協議会 
  03-6276-1177 concert@jfc.gr.jp
  カンフェティチケットセンター 
  050-3092-0051(平日10:00~17:00)


私の作品『秘密のことば』も初演されます。
錚々たるメンバーによる演奏、今から大変楽しみです。
私の方でチケットをご用意できますので、よろしければご興味のある方はご一報ください。

ちなみに私の新作は、録音音源とそれに対する自分の語りの音源、さらにそれらに対する楽譜上での注釈(エクリチュール)とをいちどきに楽譜に記して弦楽四重奏曲というフォーマットについて論じたような、複数のレイヤーが入り組んだ内容になっております。他の方たちの作品も、新たな響きをそれぞれの仕方で探求した素敵な作品ばかりです。
是非是非お運びいただけると嬉しいです。

ちなみに2022年に同じアジア音楽祭で初演された、ヴァイオリニストとチェリストのための初演動画はこちらです。
今回の作品とは異なりますが、音楽家がさまざまなシチュエーション(文脈)によって異なる身振りの音を出しているのではないか・・・という想定のもとに作曲した作品です。

久保田 翠:Violinist and Cellist (アジア音楽祭2022 in Kawasaki) 
KUBOTA Midori(Japan):Violinist and Cellist
https://www.youtube.com/watch?v=fyQmDnk0IE8



28.1.25

新・謹賀新年/天命反転住宅

なんと、前回の投稿からキリよく1年ぶりとなってしまいました。

2024年を振り返ると、色々やり足りなかったと思いつつも色々のタネを撒くことができたかなとも思います。

ところで三鷹市にある天命反転住宅に先月滞在しました。
荒川修作とマドリン・ギンズによるこの作品、というか住宅、
ショートステイプログラムがあり、数日以上という条件付きで宿泊することができます。
滞在の前にはあれをしよう、これをしようと色々考えていたのですが、いざ宿泊すると、普通に「暮らす」だけでもなかなかしんどい(笑)。写真を見ても分かるとおり床が波打っていて、平地が特定の部屋にしかありません。思った以上に身体にこたえて、みぞおちにぐるぐると来る感じがずっと止まりませんでした。
ここでの色々の実験の成果は今後また改めて。







10.1.24

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

2023年もいろいろな事に取り組みましたが、そのなかでもいくつかの心に残ったものについて書いておきたいと思います。

【7月VerbFes】

7月福岡でおこなわれたイベント「VerbFes」への参加は、自分の視野を大きく拡げてくれるものでした。
https://x.com/_pilate/status/1671994233769836544?s=20

逆卷しとねさん主催によるこのイベント、任意の動詞ひとつを選んで自由な形式でプレゼンするという仕立て。私は「遅れる」を選んで、自作をモチーフにしつつ、音源制作と自らの身体との関わりを言葉と実演で示すということを行いました。逆卷さんはじめ、以前からずっとTwitterや書籍を通じて存じ上げていた方々とリアルでお話しすることができ、楽しかったと同時に非常に学びとなったイベントでした。




✳︎

【ユリイカ 坂本龍一特集号に「作曲という営みの庭――坂本龍一といくつかの小石」寄稿】

2023年に亡くなった坂本龍一氏を偲ぶ特集に寄稿しました。

幼い頃から耳にしていた作曲家ではあったものの、改めて言語化作業を行うことで、いろいろの視座を得ることができました。
あえてよく知られたピアノ曲の中に現れた坂本の身体の痕跡をたどりました。

✳︎

【相内啓司さんによるアニメーション作品『REM - The waves of endless dreams- MKーC 』上映および各国の映画賞ノミネーション・受賞】





相内啓司さんによる上記作品に作曲したのは確かコロナ前。その後相内さんが丹念に時間をかけて制作された作品が都内で上映されたほか、世界中で数々の映画賞を受賞され、かつ多くの賞でノミネートされました。以下にそのデータの一部を載せました。
今後もさらにいろいろな方に見ていただける機会が増えるといいなと思います。







今年は教科書の出版、新しいアルバムの発表などを予定しています。

5.4.23

東京大学東アジア藝文書院『籠城』上映会+アフタートーク 星野太+小手川将+高原智史+乙幡亮

残念ながら私は伺えなかったのですが、昨年11月27日(日)に東大駒場キャンパスにて行われた映画『籠城』のアフタートークの模様がアップされました。
かつて私が修士に入る前に発売され読んでいた『表象のディスクール』について触れられていたり、最初から映画を作るつもりだったのではなく、一高プロジェクトが展開するうちに「映画を作る」ということになったことなど、興味深いエピソードが書かれています。声の使い方についての星野太さんからの鋭い指摘や、観客からの率直な意見、高原さんの声が聞こえてきそうな書き起こしなど、読み応えある内容です。

ちょうど昨年の2月末、 『籠城』制作チームのトークが、渋谷QWSにて行われました。

リベラルアーツとしての映画制作とは?-東京大学東アジア藝文書院『籠城』制作チームトーク~QWSアカデミア(東京大学)~
https://midorikubota.blogspot.com/2022/02/blog-post_17.html

あれから1年以上経ったと思うと、早いなと思います!
よい区切れとして、関連記事をいくつかまとめておきます。

EAAリサーチアシスタントであり、本映画制作にも関わっている小手川さん・高原さん・日隈さんの書かれたご報告も、公開されています。
https://www.eaa.c.u-tokyo.ac.jp/blog/report-20220227/

また、東京大学の広報誌「淡青」44号に、監督の小手川将さんのインタビューが掲載されています。
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1304_00042.html

こちら、掲載号の直接のリンク先です↓
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00165.html

こちらの学内広報は、表紙に『籠城』の一場面が表紙になっています。
10ページにも撮影風景が掲載されていますね。
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400182712.pdf


2022年6月15日(水)に駒場キャンパス900番教室で行われた上映会では、アフタートークがあわせて開催され、ゲストとして千葉文夫先生が登壇されました。
この記事の中で私と父親とのやりとりにチラッと触れていただいており、嬉しく思いました。
『籠城』がさらにどのような作品へと繋がっていくかについても考えさせられます。
https://www.eaa.c.u-tokyo.ac.jp/blog/rojo-aftertalk-20220615/

ところで自分はこの映画で得られた経験をもとに、新たな作品を構想中です。
作品が新たな作品を呼ぶように感じています。

21.2.23

「音楽本大賞」創設に向けて

こんにちは、長らくご無沙汰しておりました。
昨年の最終更新が4月、その後猛烈な勢いでとある仕事に取り掛かっていたのですが、
そちらについてはいずれ公表できると思います。乞うご期待。


ところで今回、「音楽本大賞」をご紹介させていただきたいと思います。

本を対象とする賞は数多くあれど、「音楽本」を対象とする本はない、優れた音楽本の存在もっと知ってもらいたいというところから「音楽本大賞」が立ち上げられました。発起人は鈴木茂さん、木村元さん、河西恵里さん、岸本洋和さんというすごいメンバーです。

また、選考委員も大和田俊之さん、小室敬幸さん、松平(工藤)あかねさん、渡邊未帆さんという錚々たるメンバーです。

こちらの大賞開始に際し、運営費やリターン制作費、デザイン費といった様々な費用をカバーするためのクラウドファンディングが立ち上げられました。

https://motion-gallery.net/projects/musicbookaward

わたくしも賛同人として、上のページでコメントを寄せさせていただきました。
現在、残り日数49日の時点で目標額まであともう一息です。
ぜひ少しでもご興味を持たれた方は、リンク先をご覧になってみてください。選べる金額にもかなり幅があり、参加しやすいと思います。

11.4.22

演奏会「クリスチャン・ウォルフの音楽 〜システムを変える〜」に寄せて

20211228日、福岡はアクロス福岡にあるアクロス円形ホールで行われたコンサート、「クリスチャン・ウォルフの音楽 ~システムを変える~」(河合拓始 企画・構成)を聴きに、会場へと赴いた。日本において、ウォルフの作品が取り上げられる演奏会は数少ない。しかもテーマ作曲家として全面的に取り上げられるのはかなり珍しいことである。告知を目にし、すぐに見に行くことを決めた。

 

・・・冬の日はつややかな紙をめくることからはじまりやがてなつかしくやさしい音楽につつまれることはなくてもその頁を閉じべつのごわごわした厚紙に書きうつすゆれる輪郭ふるえる輪郭ではないではなにを/なにをととわれるものではないものを/なにをとだけやがてうちかえされる冬の日/・・・(朝吹亮二『密室論』七月堂、2017年、9-10頁)

 

プログラムは、ピアノソロ、器楽デュオ、器楽トリオ、ピアノ四手連弾、8人編成による大きめと言っていいであろう室内楽編成――「室内楽」というクラシカルな語彙が適当かどうか考えなくてはならないが、取り急ぎの言葉として――というバラエティに富んだ選曲であった。

 

ウォルフのアンサンブル音楽は、時代によって記譜方法は異なれど、「互いに聴き合う」ことに主眼がある。この日のコンサートでも、演奏に参加していた奏者たちがお互いの音に耳を澄ましあい、音を「出し合う」姿が強い印象として残った。プログラムノートを見ると、奏者のバックグラウンドは多様であり、各奏者の音楽ジャンルも様々であった。当然、奏者個々人の佇まいもそれぞれに独立し、「グループ」としてのきっちりとした統一感を見せるというよりも、個々人が個々人としてごく自然に立っている、そのような印象を受けた。

 

なにごとかを言い表そうとして唇をほんの少しだけ開いてためらっているとき、未知の何かが到来するようにしてそこに不意に言葉が訪れてくるという経験が、われわれにはいくらもあるはずだ。(松浦寿輝『口唇論』青土社、1997年、120頁)

 

そしてこの日強く印象に残ったのは、互いに聴き合う奏者の姿だけではなく、ウォルフの音楽のもつ、チャーミングさであった。いや、書き直そう。それは「ウォルフの」チャーミングな音楽であり、「奏者たちの」チャーミングな音楽でもあった。不思議な仕方で聴き手のもとにやってくる魅力は、どこに由来するのかと考えていた。

 

今回の演奏会では、「歌」を素材とする1970年代の作品が取り上げられており、ウォルフ作品の演奏の前に、元となったその素材の歌を演奏するというユニークな試みがあった。例えば《エクササイズ第15番 “ユニオン・メイド》(1975)はケリー・ミルズの既製曲を元にした作品であるが、さらにその曲自体はロベルト・シューマンの《楽しき農夫》を元にしている、という具合に。

 

橋の上に風は止まる葉が落ちる見知らぬ橋

見知らぬ

ではなく、いちど通ったことのある橋かも知れない消尽点かも知れないしかし執着ではない(朝吹亮二『ホロウボディ』思潮社、2019年「陽が落ちる」より72頁)

 

そしてそうしたウォルフの1970年代以降の作品は、楽器演奏の経験を問わないようなものが多い。しばしば音部記号の選択も自由であり(ただし、一旦選択した音部記号は最後まで維持したまま読譜しなければならない)、厳密に音を合わせる必要もない。

 

「途上の歌」。ウォルフの楽譜から立ち現れる「途上の歌」とはなんなのか。歌を素材にすれば当然そのような結果になるであろう、と考えがちであるが、実はそのような単純な話でもない気がする。「途上の歌」、始まったけれども完結することのない歌。音楽は常に途上のままである。例えるならば、地図を眺めて俯瞰的に目的地へと向かうのではなく、Googleマップのような地図アプリを使って、自らの進む道筋だけを明確にして歩き進んでいる時の感覚に似ている。

 

ステロタイプ化された言葉のルーチン性の裏をかくような場所と時刻に、思いがけない言葉が不意にどこかからやって来て、背景の〈地〉としてある文脈そのものにある変容なりずれゆきなりをもたらすということがたしかにあるのだ。(松浦寿輝『口唇論』青土社、1997年、121頁)

 

「フレーズ」という語がある。我々の日常において、かつ時に言語運用に関連して用いられる語であるが、音楽において非常に重要なものとなる。たとえば「ド」と「レ」と「ミ」という3つの音を、それぞれポツンポツンと独立して発するならば、単にそれは音のカタログのようにしか聞こえないであろう。しかしながら「ド」から「レ」を通過し、「ミ」に至るまで、動的な潜勢を持って演奏するならば、聞く人はそこに「フレーズ」を感じ、人によっては「カエルの歌」の冒頭部分と捉えることだろう。

あるいはよりクラシカルな音楽で考えてみよう。Fマイナーのコードを構成する3つの音(F, A flat, C )の鍵盤を適当なランダムさで叩くならば、人はそこに「Fマイナーコードの構成音を説明する例示としての音」を聞き出すであろう。しかしながら、ある音楽的意図とフレーズ感をもってそれらの構成音を奏すると、ベートーヴェンのピアノソナタ第1番冒頭の旋律が聞こえてくる。

 

つまり「フレーズ」とは、あるいは「フレーズ感」を持って音を奏するとは、楽譜上には現れないある動的な音の性質を身体を通じて具現化することであり、それはある音をまた別の音との関連性において捉え、生成することである。音の背後にある身体は、複数の音をフレーズにつむぎあげるために、音と音との間で架橋しようとする。連続性のうちに実現される身振りによって、フレーズは実現される。

そして、フレーズは通常、始まってから終わるまで一続きのものであり、完結することを余儀なくされる。フレーズとはその都度の目標地点を目指すものだからだ。


身振りとは、ある手段性をさらしだすということであり、手段としての手段を目に見えるものにするということである。身振りは、人間の、〈間にあること〉をあらわにし、人間に倫理的次元を開く。(ジョルジョ・アガンベン『人権の彼方に 政治哲学ノート』以文社、2000年「身振りについての覚書」より64頁)

この日演奏された多くの作品において実現されていた音は、個々の奏者が個別に奏するものでありながら、常に他の音との関係性のもとに置かれ、かつ完全なフレーズをなかなか実現しないように思われた。手渡された音は、自らの手から他者の手へと手渡される。自己から他者へ向かう音の動線はつながっては行くが、時にふと途切れ、またつながり、終わることはないものの演奏時間の終わりに向けて様々に維持される。音は止むことはない。フレーズは完全に途絶えることはない。しかしながらどこから来てどこへ向かうのかわからない。それは決して非連続ではないが、かといって完璧な連続ではない。常に不完全な連続、不完全な歌の不完全な受け渡し。


変幻する幾筋もの声が

すべての速度で飛翔し、散乱してゆく

(朝吹亮二『朝吹亮二詩集 現代詩文庫102』思潮社、1992年「雪道を閉ざす」より47頁)

 

直接的に歌を素材としていない《システムを変える》(1972-73)についても、「途上の歌」という言葉はわたしについてまとった。確かに、インストラクションの中で楽器指定について「幾つかの楽器はメロディーで」という指示があり、「フレーズ」という言葉が「連続した音のシークエンス」という説明で用いられている。しかし音の繋がりは必ずしも完結した歌へ結実するわけではない。

 

この日《システムを変える》の演奏に関わった奏者は、プログラムノートを見ると、いわゆるクラシカルな音楽教育を大学や海外の音楽院で受けた方もいれば、人文学の研究者として活動しつつ演奏する方、ポピュラー音楽の演奏に携わる方もいるなど、先述したように多様な出自を持つ。彼らはそれぞれの領域でそれぞれの探究を行いながら、なおかつ開かれ、他者へとつながろうとしている。そのつながり方は、同じような身振りで同じ質の音を出すということではなく、各人の仕方で各人の音を出すこと、しかしながらひとりひとりが勝手気ままに音を出すのではなく、あくまで「相手を聴き合いながら」音をだし、つながり合うこと、という仕方である。ウォルフの楽譜から理念的には理解できていたことが、実際に音となって会場空間に立ち上がり響きとなって充満していたのを目の当たりにした時、新鮮な悦びに包まれた。

 

他者に繋がろうとする姿は、音の響きの質からも感じられたように思う。ウォルフの音楽は、決してわかりやすい、それと聞いてすぐわかるような「親しみやすい」旋律を使っているわけではない。ただ音を手渡してゆく、といってもいいかもしれない。同じ空間に立ち、互いの存在を認めながら音を手渡すこと。手渡され、手渡すという行為を繰り返すことにより、音にはそれと知らぬ接触の跡が、手指のさわった跡が残され堆積してゆくことだろう。その堆積は、まだ見ぬ「歌」を導き出そうとする音を繋げようと試み続ける。

 

・・・しかしたしかな冬の日/紙片に挿入する/ない/ということばは/ない/という音はけっして閉じることはなく響きいやふるえいや響きもふるえもせず意味ももたずかたちもなくつながるシンタクスもなくきらびやかなイメージもなくこごえいやこごえるぼくをあたたかくつつみこむいやあたたかくぼくの血をぬくいやあたたかくぼくの人をぼくの人という脳のふるえを/・・・(朝吹亮二『密室論』七月堂、2017年、12頁)

 

 

 

演奏会内容の記述については、当日配布されたパンフレットを参照している。

 













17.2.22

東京大学東アジア藝文書院 映画『籠城』プロジェクト

東京大学東アジア藝文書院の一高プロジェクトで制作された映画『籠城』に、音楽制作として参加させて頂きました。

https://www.eaa.c.u-tokyo.ac.jp/projects/first-high-school-materials-archive/rojo-trailer/

制作系ではない一般大学で映画を作る、というのが新鮮に映るかもしれません。しかしながら、一高についての研究が脚本に反映されているのはもちろんのこと、東大のアーカイヴも参照されるなど、制作過程には学術研究との深い関わりがあります。スタッフには、研究とともに実作を行う方々が名を連ねています。そのような中で、自分の音楽制作もまた自己反省的な試みとして行うことができ、得られるところが多々ありました。

上映に先立ち、2月27日(日)に渋谷QWSにて制作チームによるトークイベントが行われることとなりました。私も参加させていただきます。寮歌のアレンジ等についてお話しする予定です。
感染拡大状況によってはオンライン配信のみとなるそうですが、ぜひご興味を持っていただけたら幸いです。以下のリンクよりチケットをお申し込みいただけます。

*****

リベラルアーツとしての映画制作とは?-東京大学東アジア藝文書院『籠城』制作チームトーク~QWSアカデミア(東京大学)~

◆日時
 2022年2月27日(日)13:00 - 15:00
◆会場
 SCRAMBLE HALL+オンライン(Zoomウェビナー)
◆タイムテーブル
 12:30 開場
 13:00 開会の挨拶、QWS紹介、趣旨説明
 13:10 制作チームトーク
  ①『籠城』トレイラーと作品コンセプトの紹介
  ②メイキング映像と制作プロセスについて
     -映画制作と学術研究
  ③旧制第一高等学校寮歌アレンジ、駒場の音風景、
     サウンドデザイン
 14:30 ディスカッションと質疑応答
 15:00 閉会の挨拶
◆参加料
 無料







14.2.22

坂本光太さんソロリサイタル

 「実験音楽とシアターのためのアンサンブル」でもお馴染みのチューバ奏者、坂本光太さんのソロリサイタルにて、委嘱新作が初演されることとなりました。2月26日(土)にくにたち市民芸術小ホールにてコンサートが開催されます。



坂本さんは現在京都女子大学で教えておられ、グロボカールの研究者でもあります。数年前の(まさにコロナウィルスが広がる直前の)グロボカール演奏会は話題を呼びました。

昨年関わっていた映画制作からの刺激もあり、本作品の着想源は、私の好きな映画作家であるタランティーノ。それから濱口竜介監督の制作方法にもインスピレーションを受けています。あるコンテクストでしか聴く(聞く)ことのできない音や音の身振りにフォーカスした作品です。
2回公演となっております。是非お運びくださいませ。


曲目:
ベートーヴェン:ホルン・ソナタ Op.17
クララ・ヴィーク=シューマン:3つのロマンス
ジェニファー・グラス:ソナティナ
久保田翠:あるチューバについての物語(委嘱新作)
チケット予約(web):
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=63988&
2022年2月26日 (土)
14:00/17:00(2回の演奏会)※開場は、開演の30分前
会場:くにたち市民芸術 小ホール
全席指定:1,000円(税込)
出演:坂本光太(チューバ)/杉山萌嘉(ピアノ)
主催:公益財団法人 くにたち文化・スポーツ振興財団
協力:国立音楽大学
フライヤー等デザイン:岡千穂
公益財団法人くにたち文化・スポーツ振興財団と国立音楽大学との連携によるコンサートです。

7.1.22

『later』サブスクリプションサービス開始


あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年も多くの出会いがあり、新たな領域へのチャレンジがありました。今年もすでにいくつかのプロジェクトが進行しており、それらをいつかアナウンスさせていただけるのがとても楽しみです。

さて、直近のお知らせとしましては、2020年秋に発売されたアルバム『later』が、サブスクリプション・サービスにてお聴きいただけることとなりました!👏👏👏👏👏👏

「モノ」としての手触り、佇まいにこだわったアルバム、引き続き各種サイトからも販売は続けていきますが、サブスクリプションにより、さらに新たな出会いがあるといいな、と思っております。
主な配信URLは下記のとおりです。
Apple Music: https://music.apple.com/jp/album/later/1599070323
Spotify: https://open.spotify.com/album/2KW4ogVfCoo7g4aOScmxZL
LINE MUSIC: https://lin.ee/FEuqwlq
その他の配信先は下記TuneCoreのページにリンクがございます。
TuneCore: https://linkco.re/QNqFst0Z?lang=ja

また、アルバム発売後に寄せられた『later』へのエコーとしてのことばの場、Echoes of "later" もあらためてご紹介します。

https://www.ombrophone.net/jp/echoes.html

各界でご活躍されている方々に、アルバムを出発点として自由にご執筆いただきました。それ自身が独立した珠玉の言葉たちとなっております。ぜひ、個々の世界をご堪能くださいませ。

『intoxicate』に掲載された、大西穣氏によるアルバム『later』レビューはこちらからご覧いただくことができます。

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/27197アルバム『later』をめぐる作家自身のテクストは以下のページにそれぞれございます。
・遅さについて https://midorikubota.net/jp/lt.html#belatedness
・演奏とドキュメンタリーについて https://midorikubota.net/jp/lt.html#documentary
・疲労について https://midorikubota.net/jp/lt.html#exhausted


矢継ぎ早のご紹介ではありますが、少しでもお楽しみいただけたら幸いです!

8.11.21

「TAMA VIVANT Ⅱ 2021 —呼吸のかたち・かたちの呼吸—」展

本日11月8日より、美術家・飯嶋桃代さんの展示が多摩美術大学アートテークで始まります。私が音楽制作として参加させて頂いた今年2月の飯嶋さんの個展が、今回の展覧会にあわせて再構成されたうえ、音楽もまた演出を変えて再展示されます。

今年2月に書いた、飯嶋さんの個展の紹介記事リンクを再掲いたします。

「脳痙攣患者の脳波を楽譜に起こす」というコンセプトのもと作成した音源です。
脳波自体はあるデータの記録ですが、その脳波の動きを手で触るような、指先で振動を感じ音へと繋げてゆくような、そのようなイメージで記譜・演奏しました。

ギャルリー東京ユマニテさんという都会の親密な空間から、緑豊かな多摩美大のキャンパスへと移動。また、個展という場から複数の作家の作品が設られた広い空間に移動したことで、音楽もまた別様の佇まいとなっております。ぜひお運びいただいて、体験していただけたらと思います。

*******

「TAMA VIVANT Ⅱ 2021 —呼吸のかたち・かたちの呼吸—」展 多摩美術大学八王子キャンパス アートテークギャラリー
https://www2.tamabi.ac.jp/geigaku/211027/

2021年11月8日(月)~17日(水)10:00〜16:00 日曜休館 会場:多摩美術大学 八王子キャンパス アートテークギャラリー101, 102, 103, 104, 105 出品作家: 飯嶋桃代、加藤真史、木坂美生、高橋臨太郎、堀江栞、吉川かおり、渡辺豊重


設営中の様子(エンジニア:中村益久さん)


17.10.21

『ピアノで弾く チャーチソング ~讃美歌・聖歌~ 』発売開始

讃美歌のピアノ・ソロアレンジ集『ピアノで弾く チャーチソング ~讃美歌・聖歌~ 』が完成しました!


教会はもとよりキリスト教系学校やイベントでもよく歌われているものを厳選、弾きやすいレベルでアレンジしました。讃美歌・聖歌のピアノアレンジはなかなか楽譜として多くはないのではないかと思うのですが、今回はシンプルさを活かしたものからかなり挑戦的なものまで多種多様なアレンジを行っています。是非お手に取って頂けると嬉しいです。個人的に特に「主よみもとに」は、実験音楽に関わっていらっしゃる方にもみていただきたいと思っております。
基本的にメロディーはそのままなので、伴奏として用いることも可能です。

私はクリスチャンではないのですが、20~30代の頃の挙式奏楽、神戸女学院大学・聖学院大学というプロテスタント系の大学に勤めてきたこと、コロスタシア・アネックスなどコーラスアンサンブルのアレンジをさせて頂いてきたこと、クリスチャンの知人・友人がいたことなど、様々な経緯があり、自分なりに讃美歌に親しんできたと思います。晴れやかな気分でクリスマス礼拝に参加したりする一方、お世話になった方をチャペルでお見送りすることもありました。ですので、自分で弾いていても個人的な思い出がさまざま蘇ってきます。

以下のリンク先で購入できるほか、楽譜店などにはおそらく今週末あたりから、Amazonなどのネットショップでは月末からの発売になるとのことです。ぜひごらんください!

***
久保田 翠:『ピアノで弾く チャーチソング」~讃美歌・聖歌~ 』
http://www.editionkawai.jp/shopdetail/000000007132/...
↑立ち読みあり
ISBN 978-4-7609-0675-8
1. いつくしみ深き
2. 荒野の果てに/あめのみつかいの/君なるイエスは今あれましぬ
3. きよしこの夜/しずけき/静かな夜、聖なる夜
4. 牧人ひつじを/まきびと
5. さやかに星はきらめき/聖なる夜
6. 諸人こぞりて/民みな喜べ
7. 天には栄え/聞け、天使の歌/きけやうたごえ
8. いざ歌え、いざ祝え/きよけし
9. 主よみもとに/主よ御許に近づかん
10. 神よ、たまえ平和を/われらに平和を与えたまえ
11. アーメンハレルヤ
12. ガリラヤの風かおる丘で
13. やさしい目が
14. 神ともにいまして



24.7.21

『REPRE 42号』書籍紹介


表象文化論学会のウェブ『REPRE 42号』新刊紹介欄にて、田中純先生の『デヴィッド・ボウイ 無を歌った男』について執筆させて頂きました。

 https://www.repre.org/repre/vol42/books/sole-author/tanaka/

お読みいただけたら幸いです。

ちなみに個人的なことですが、デヴィッド・ボウイを初めてミュージシャンとしてリアルタイムで意識したのは I'm afraid of Americans がリリースされた時でした。

https://www.youtube.com/watch?v=u7APmRkatEU&t=137s

当時ベスト・ヒットUSAやMTV music awardsなどでかなり紹介されていたように記憶しています。この時、ボウイが過去どのような楽曲をリリースしていたか全く知りませんでした。そしてこの曲が収録されたアルバム『アースリング』をレンタル店(時代・・・!)で借りるも、そこから他の作品を聴こう、とまではなりませんでした。

これ以外で好きな曲といえば Let' Danceであり、自分は無意識のうちにアメリカを通じてボウイを見ていたのかもしれません。自分の好みにストレートにはまるわけではないのに、なぜか気になってしまう。その辺りは今回書かせていただいた文章とリンクするように思います。

例えばマイケル・ジャクソンのRemember the Timeに出演して話題になったモデルのイマンはボウイの妻でもあり、ボウイを一人の存在として(間接的にではあるにせよ)意識したのはひょっとするとそれが最初かもしれません。I'm afraid of Americansがリリースされるよりも何年も前のことでした。亡くなってしまった現在の方が、ボウイに対してもっと興味が湧いています。

25.4.21

アルバム『later』より2曲、フル視聴解禁

アルバム『later』より、リードシングル的な2曲をフル視聴できるよう公開いたしました。以下のSoundcloudでお聴きいただくことができます。

「Merei-träu(メライトロイ)」はシューマンの「トロイメライ」を一旦解体し、再構築したピアノソロ作品です。実は前任校の和声の授業で学生に課題として行わせた内容をヒントにしたもので、自分もその課題をやってみたら作品そのものが出来上がってしまった・・・という経緯があります。

ちなみに題材となっているシューマンは、学生時代はそこまで思い入れのある作曲家ではなかったのですが(高校時代『アベッグ変奏曲』は楽しく弾いたものでしたが)、楽曲分析の授業でロマン派の作品を取り上げることになった際、改めてその魅力に惹かれたのでした。作品の所々で現れる「謎」のようなポッカリとした穴に足元すくわれる感覚がいいなと思います。

「Performance studies 6」はアルバムを締めくくる大切な一曲です。「対位法による任意の音楽の楽譜を選びなさい。任意の内声部のみ1小節遅れて演奏しなさい」というインストラクションを愚直に実行しているのですが、奏者の格闘とは裏腹に、儚い夢のような音の断片が漂います。このトラックに限らず「Performance studies」シリーズは、演奏した本人でさえも音源をなかなか個々のテイクを識別できず、ミックス・マスタリング作業の際に非常に苦労した思い出があります。

いずれの二曲も、録音ならではのピアノの音の響きにこだわりました。倍音の広がりや、奏者の逡巡まで聞こえるような音の佇まいを是非お楽しみいただけたらと思います。

24.3.21

アルバム『later』販売から半年を迎えて

アルバム『later』を世に出してから、ちょうど半年が経ちました。作品として形にできたよろこびと同時に、作品を通じて多くの方とつながり世界が拡がるのを実感できた半年でした。

一枚のアルバムを制作するために、多くの方々のお力をお借りいたしました。関わってくださった方々に改めて感謝申し上げます。それと同時に、アルバムを手に取り聴いてくださった方々、感想をお寄せくださったり、作家本人も思ってもみなかったような展開を示唆してくださった方々に、心より感謝申し上げます。

『later』の世界を確立させつつ——このアルバム自体世界に対する大切な名刺、というような位置付けではあるのですが——飯嶋桃代さんの展示に音楽を制作したり、文章を綴ったり、と本人なりに創作の層を重ねてきた一年でした。新たな展開を見据えつつ、昨年末のオンライントークで扱いきれなかった内容でちょっとした企画も考えております。

アルバムはAmazon、ombrophone records ウェブショップ( https://ombrophone.thebase.in/ )、タワーレコード新宿店・渋谷店ニューエイジコーナーなどで販売中です。いずれストリーミングでの販売も・・・とは考えておりますが、いますこしだけ、物質としての手触りや音と言葉の邂逅を楽しんでいただきたく思います。

これまでのアルバムにまつわる様々をまとめました。ご覧いただけましたら幸いです。

18.3.21

色々のご報告

気がつけば三月、かなり春の兆しが感じられるようになりました。

SNSなどでお知らせしていたいくつかを、まとめてご報告させていただきます。 

【1】

飯嶋桃代さんの展示が無事終了いたしました。ご来場頂いたみなさま、気にかけてくださったみなさま、ありがとうございました。

SNSではすでにシェアをしていたのですが、コロナ禍ということで会場の様子をダイジェスト的にまとめた映像が公開されました。私の音楽も一部収められています。よろしければ是非ご覧くださいませ。

https://vimeo.com/515100821


【2】

東京大学出版会から毎月発行されているPR誌『UP』にて、田中純先生が私のアルバム『later』に言及してくださいました。言葉それ自体との出会いはもちろんのこと、作品から作品へとつながるご縁をあらためて嬉しく感じます。

https://twitter.com/tanajun009/status/1369124158290817026?s=20

ペソアの言葉を嚆矢としつつ、様々なテクストをめぐる旅のように読ませていただきました。都心の大規模書店に置いてあるようですので、よろしければお手にとってみてください。私は新宿紀伊国屋書店で手に入れました。

「無の色気 ボウイ論の余白に」田中純

http://www.utp.or.jp/up/

8.2.21

 美術家・飯嶋桃代さんの新作展が、本日2月8日よりギャルリー東京ユマニテにて開催されます。この新作展に、18chの音を制作させていただきました。

飯嶋桃代「Recovery room―ましましいねつるかも」

録音・音響設営は、アルバム『later』でも大変お世話になった中村益久さんです。

上の美術手帖の記事にもあるように、近年疾患や治癒といったテーマで飯嶋さんは制作されています。今回は会場を「病を回復してゆく空間」として制作されているそうです。

「脳痙攣患者の脳波を楽譜に起こす」という作業を行ったのですが、飯嶋さんの最初のイメージから出発しつつ、「脳波を《触る》」ような記譜ができるよう試みました。展示の一部として、観る人の想像力を拡げられるようなものとなれば幸いです。

先日設営に立ち会ってきましたが、ちょっと見たことのない音の配置で、当初予想していた以上にいい響きです!「いわゆるインスタレーション的な」音響ともまた佇まいが異なるかと思います。

是非お立ち寄りくださいませ。